224人が本棚に入れています
本棚に追加
それからは、ずっと皆勤賞で練習に励んでいた。基礎体力トレーニング・柔軟体操・発声練習・エチュード(これは即興で行う演技練習の事)など、初めてやる事が多くて大変だけれど、新鮮で楽しくて充実感があった。森田さんも入部してくれて、教室でも仲良くおしゃべり出来るようになったのも良かった。演劇部に入部したおかげで、今までと違う人生が始まったような気さえした、それくらい刺激的な毎日がやってきた。
ここまでの、まだ『彼女』のいなかった日々は、よく考えてみたらどこにでもある普通の高校生の新生活だったけれど、なかなか楽しく過ぎようとしていた。とにかく中学の時よりもっと楽しくカッコよく、充実した学生生活を送りたいと思っていた。
でも最近、一つの大きな壁にぶつかってしまった。
部では今度、ミュージカル公演を行う事になった。この公演は新入部員を演劇に慣れさせるというのと、そのお披露目の意味もあって、全員が脇役でも何かの出番をもらえる事になった。だから最近の活動は、公演の為の練習一色になっていた。
ミュージカルといえば、セリフの他にも登場人物の気持ちを表現する物として、『歌』と『ダンス』が欠かせない。歌はソロパートもないし、超絶オンチでもないのでクリア出来ていたが、問題はダンスの方だ。動きを覚えるのが得意じゃなくて、リズム感も無いせいか、いつもみんなと動きがズレてしまっていた。
最初のコメントを投稿しよう!