新生活のスタート!

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ある日のダンスレッスンの事だった。大所帯の我が部は、男女に分かれて練習を行っていた。 私達新入生女子は、大人数のアイドルユニットを演じる事になっていて、この日もスタジオに置いてあるCDラジカセからは、ダンスシーンで使うポップなアイドルソングが流れていた。短い時間で振り付けをマスターしていくごく少数の経験者に、なんとなくカタチになってきた半数くらいの未経験者、そしてフローリングのスタジオをバタバタとのたうち回るように苦戦していた「それ以外」の私達が、みんな同じ場所で練習していた。 「森田、動きがちっちゃい! 辰野、もっと顔上げて! おい早川、また遅れてるぞ!」 指導役である梶本先輩の、鋭いチェックコメントがスタジオに響いた。同じクラスの森田さんにD組の辰野さん、そして私――、ダメ出しされているのは私だけじゃないけれど、私への指摘だけみんなよりレベルが低い気がした。思えば、小中学校時代の授業でもダンスはあまり得意じゃなかった。そして、その後すぐに音楽が止まった。 「ちょっとちょっと、ダメ過ぎるだろ! 昨日やったばかりの所がまるで出来てないじゃん! いい? みんな、このダンスシーンは劇中でも大事な所なんだよ。ここがショボく見えたら、劇全体がダメになっちゃうんだよ! こんなのまだ基本中の基本だし、こんなところでつまずいてちゃ、いつになってもフォーメーションに行けないぞ!?」 頭をクシャクシャと掻きながら、先輩がカリカリした口調でまくし立てた。スパルタ指導で有名な先輩は、自分が組んだレッスンスケジュールが大幅に遅れているせいか、イライラがMAXに達していて、顔も興奮で真っ赤になっていた。新入部員みんなが、まるで黙とうを捧げる時みたいに静かになってしまった。     
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