春雷の来訪者

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春雷の来訪者

次に意識が戻った時、私は部屋のベッドの上であおむけになっていた。薄く開けた目から天井の明かりが見え、窓の外はいつの間にか真っ黒な雲が覆っていて、シャワーのような雨が強く降っていた。冷たい風がカーテンをなびかせながら吹き込み、雷の音も時々遠くで聞こえていた。 良かった、さっきまでの出来事は全部夢だったんだ! 寝ている間に雨が降って雷が鳴っていたから、それが深層心理に影響してああいう夢を見た。充分あり得る事だと思った。風景だってなんか不自然だったし、だいたい、ああいう高原は車じゃないと行けないような所にあるから、私一人で行くなんて不可能だ。まったく、高校生にもなってカミナリ様と鬼ごっこだなんて、ファンタジー過ぎて恥ずかしい。それにしても結構怖かった。疲れを取るために寝たのに、全然休めなかったな。夢で起こった事を興奮気味に振り返りながら、ほっと一安心して二度寝に入ろうとした。     
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