絶体絶命!

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絶体絶命!

「ではそなたのヘソ、いただくぞ!」 彼女の両手が激しく光った。私は観念して目をつぶり、おヘソを奪われるまでの恐ろしい暗闇と沈黙に包まれたまま、その時を待った。 でも、しばらく経っても電撃は向かって来なかった。目を開けて彼女の方を見ると、両手から光の輝きが段々と失われていき、ついには消えてしまった。どうやら電撃を打てなくなったようだった。そして、蚊取り線香の煙を浴びた蚊のようにぽとりとベッドの上に落ちた。 「ぬかったわ! よりによってこんな時に……!」 彼女は光が出なくなった両手を見つめて困った顔をしていた。明らかに動揺しているのが見てとれたので、反撃のチャンスは今しかないと思った。 こんな時、昔読んだ絵本の主人公はどうしていただろうか。そうだ、確かどこかに閉じ込めていたんじゃなかったっけ。私は、すかさず彼女の小さな身体を両手でつかんだ。 「何をする! 放せ!」 じたばたと暴れる彼女の声を無視しながら、机の上にあった虫かごのふたを開けると、その中にふわっと彼女を投げ入れた。 「あなたをそこから出られないようにするから!」 虫かごのふたを閉めて、その上に辞典を載せて重石にした。 「おい、やめろ! 出さぬか!」     
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