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良く使い込まれた飴色の小さな戸棚から、手入れの行き届いた茶器を取り出していたラヴィーネは、ルーファスのその言葉に一瞬不思議そうに目を丸くするも、すぐさま目尻を下げどうにも困った様な笑みを浮かべた。
そのままラヴィーネは、無言で金で縁取られた真っ白なソーサーをルーファスの前に置き、揃いの柄のカップをその上に置く。
テーブルの中央に花の形を模したティーポットウォーマーを置き、その上にふっくらと愛らしいフォルムのティーポットをセットすると、ようやくルーファスの向かいの椅子に腰を降ろした。
ティーポットウォーマーにはどうやらアロマキャンドルが灯されているらしく、鼻に付く事も無くお茶の香りを邪魔する事も無い、絶妙な加減の花の香りが徐々に広がっていく。
アロマの香りに囲まれしばしポットの中で泳ぐ茶葉を眺めていると、ようやくルーファスは普段通りの落ち着きを取り戻す事が出来た。
そしてそれを見計らった様に、ラヴィーネが小さく笑い声をもらした。
「あぁ、失礼しました。私は店主のラヴィーネと申します。どうにも誤解を招きやすい容姿と名前をしていますが、こう見えてルーファス殿と同じ男ですよ。私のこれもまぁ呪いの一種ですが……今はそんな事よりも、ルーファス殿のお話をお聞かせ下さい」
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