元同僚の昔話2

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「全く、新しく出来た友人の前だからって、いくら何でも無防備過ぎよ。なに簡単に私の術なんかにかかってるのかしら……」  先程までとは全く違うその声色に、ルーファスは目を見張った。  ルーファスが少し体に力を入れたのが分かったのか、エマは顔を上げると照れくさそうに眉を下げ小さく笑う。 「まさか……演技だったのか?」 「確かに強くないけど、おやつ時に飲む様な甘いワインじゃ酔わないわよ」  ぺろっと舌を出しワインの瓶を振るエマは、申し訳無さそうに眉こそは下がっているが、相変らず子どもの様な無邪気な笑顔をしていた。 「さすがにね、酔ったフリなんてちょっと無理があるかな? って思ってたのに……。まさか本気でルーファスに魔法使いだった時の姿を見せたくないのね。どうせこの人の事だから、自分の事なんて何にも言って無いんでしょ?」  ルーファスは少し記憶を探ってみたが、確かにラヴィーネの口から前職の話を聞く所か、この前の伯爵家の魔物を捕らえる時ですら、魔法を使う事を渋っている様子だった。  再びエマに視線を戻したルーファスは、一度無言で頷くと話しの続きを促すようにマロングラッセの箱をエマに差し出し、座ったまま戸棚に手を伸ばし茶器の準備をする。     
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