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女装して初対面の人間に懇願する程色々な物を投げ捨て生き恥を晒してはいるが、最後に残ったものだけはどうしても捨てられない。
ラヴィーネもそう決断すると分かっていたらしく、何事も無かったかの様に再び羊皮紙に視線を落とした。
ラヴィーネが顔を動かす度に飾りのれんが音を立て再び絡まる。
業を煮やしたルーファスは思い切りラヴィーネの頭を押さえつけ固定すると、そのまま猛然と絡んだ飾りを外しにかかる。
ラヴィーネもラヴィーネで、初対面の相手に好き勝手やられ放題なだけならまだしも、近くにあった薬品の瓶を一本手に取り蓋を開けると、真剣な表情で飾りと格闘するルーファスの真一文字に引き締められた口に、何の躊躇いも無く薬を流し込む。
そして何の効果も無いと判断すると、再び同じ事を繰り返す。
無事にラヴィーネが飾りのれんから解放された頃には、ルーファスは小瓶五本分もの薬を飲み干していた。
「やはり今手元にある薬ではどうにもならないですね。一応それなりに魔法を練り込んだ物でしたのに……。原因が判明していても呪いの正体を突き止め根本から解決しない事には完治しないので、しばらくお付き合い願えますか?」
ようやく飾りのれんから解放されたラヴィーネは、肩を回しながら呆れ顔で隣に立つルーファスを見上げる。
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