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初めましては女装から1
ラヴィーネ・ヴァーゲンザイルは突如店に駆け込んで来た奇怪な客に驚き、棚に角を引っ掛けてしまった。
ラヴィーネが身動ぎする度に古い木製の棚が悲痛な音を立て軋み、棚の中では色とりどりの硝子瓶が身を寄せ合い小さく震え上がっている。
そんな事など一切構う事無く、駆け込んで来た客はラヴィーネをその目で捕らえるや、一瞬の間も置かず間合いを詰めラヴィーネの両肩をしっかりと掴む。
「頼む解呪屋! 俺を助けてくれ!」
鮮やかな真紅に純白のラインが美しいシンプルなイノセントドレスに身を包んだ男は、低くとても力強い声でそう告げるやその場に泣き崩れてしまった。
ラヴィーネは、どうにか落ち着きを取り戻した女装の男――ルーファスを連れ、すっかり物が散乱してしまった店は一先ず放置し、店の奥の個室に移動する。
「すまない、女性の前で取り乱すとは騎士として男として恥ずべき事……。その姿、店主も呪いを受けたのか?」
目を腫らしたまま椅子に座りドレスの裾を握り締めたルーファスは、遠慮がちに少し離れたところでお茶の準備をしているラヴィーネに視線を投げかける。
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