絵空事

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「なんて送ろうかな、返事くるかな」 そんなことを思いつつ文字を打って消してを繰り返す。 挙げ句の果て、送らなかった。 「どーせ忙しいし、見ないよな 覚えてもないだろうし、送ったところでだな」 相変わらずネガティブ。 「このことは忘れよう。 よし、忘れるためにサッカーでもしよう」 と、すぐさま着替え公園に向かった。 昔からサッカーをやれば嫌な事は忘れられる。 ただこの日はいつも人がいないはずなのに10人はいたから集中しづらかった。 自主練は見られるものではない。 見られることというか、見られてる感じがすることが嫌。 ましてや、制服を着た、いわゆるJKが見てる気もする。 ただの気のせいかもしれないが、とにかくこの見られてる感が嫌だった。 けどなんだかんだ集中していたみたいで時計を見たら1時間は練習していた。 クールダウンを済ませ公園を去ろうとする。 「はぁ、JKの前通って公園抜けるの恥ずっ」 と思いつつその子の横を通り背を向け早歩きをした瞬間 「もしかして…たつや?」 「えっ、なんで名前を知ってぬるんだ?」と思いながら振り返ると、よく見たらそのJK、 「えっ、ゆり?」 この子が正しく幼馴染という名のアイドルである。 「やっぱりたつやだ!元気?」 いつまでも覚えてるその笑顔で僕に聞いてきた。 「ぼちぼちよ、よく俺だってわかったね。」 「ちっちゃい時からサッカーやる姿は変わってないもん!」 「そっか笑」 彼女も昔から変わってなかった。 それから数時間、思い出話やお互いの近況を話した。 「たつやのサッカー頑張ってる姿みてたら私も頑張ろうって思えたよ、ありがと」 「こちらこそだよ」 そして別れ際。 「じゃあまたいつか会おうね、今日はありがと、サッカー頑張ってね、応援してるよ!バイバイ」 「うん、俺も応援してる。じゃあね」 彼女はこちらを振り向かなかったが僕はその場に立ち尽くし、曲がり角を曲がるまで見送った。 その後ろ姿が名残惜しかった。 彼女からたくさん学んだ。 正直プロサッカー選手になれるか毎日不安だったけど彼女が何度も「一緒に頑張ろう」と言ったニュアンスの言葉をくれて僕はこの日を境に変わろうと決心した。 こんな絵空事のような出来事があった今というこの瞬間を僕は一生忘れることはない。
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