94人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
【side:ユウヤ】
俺は風花にウソをついた。それは──。
昨日、職場のみんなで酒を飲んだ。実は送別会だった。誰のって、俺の。
いい加減フリーターはやめてちゃんと就職しようと、2、3ヶ月前からこっそり働き口を探して、ようやく決まった。知り合いに紹介された小さい不動産屋だ。
理由はもちろん、風花。ちゃんとした仕事をして、安定したらプロポーズでもしようか、なんて思ったからだ。
ちなみに、就職することはまだ風花に話していない。なんか照れくさくて言えていない。
まあそんなわけで、パチ屋の送別会をやってもらったら、しこたま飲まされた。うっかり泥酔した俺は、何故か風花の家に突撃。だって会いたくなったから。
「祐哉くん。昨日のこと覚えてる?」
「……いや? 全然」
──ごめん、ほんとは覚えてる。
恥ずかしげもなく「愛してる」を連発したのだ。穴があったら入りたい。
「俺、なんか変なこと言ってた?」
「ううん、なにも」
さすが風花。知らんぷりしてくれる辺り、俺のことをよくわかっている。そういうところ、ほんと好き。
とりあえず、プロポーズする時にはシラフで「愛してる」って言う(努力はする)からさ。今日のところは、そのまま聞かなかったフリしててよ。
~END~
最初のコメントを投稿しよう!