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【side:ユウヤ】
ひとめぼれなんてあるんだな。
傘の中で彼女と目があった瞬間。心臓が大きく跳ねて、身体に強い電流が流れた。
雨に濡れた頬や長い髪はやけに色っぽくて。でも、大きな褐色の瞳はどこかあどけない。ぷるっとした小さな桜色の唇も。
そんな彼女を見ていたら、なんだかぐちゃぐちゃな気持ちになって。どこの誰だかも知らないのに、強烈に好きだと思った。
そこに唐突に放たれた、彼女の言葉。
「好き」
「……な、なに?」
自分の心を見透かされてしまったのかと思い、激しく動揺した。
「あの、好き、です」
目の前の彼女は、そう言ってはにかんだように笑う。その笑顔にまた心臓が跳ねて、脳がグラグラ揺れた。重症だ。
「わたし、あなたにひとめぼれしちゃったみたいです」
俺はようやく、言葉の意味を理解した。どうやら俺は、ひとめぼれした相手にひとめぼれされたらしい。
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