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「百事如意」に掛けた「無事如意」は、僕流のジョークである。
そのジョークに、住職は「ほう。」と来たのである。
しかし、いま屏風に書いた字を見ていると、我ながら、なかなか妙味のある言葉である。
ただ単に、如意なるものは、何もないという意味だけじゃなく。
この「無事」という言葉自体が持つ意味と掛け合わされて、「無事」が「如意」であると解釈も出来るじゃないか。
無事には、日常生活で使う事故がない、元気だという意味の他にも、何もしない、求めない、
あるがままという意味もある。
なかなか、僕の造語も深いじゃないかと思っていると、住職が、真剣な表情で「成るほど。」と言った。
何が成るほどなのか、もともと僕のジョークなのだから、意味がないはずである。
これなら、「百事如意」をもじって、「百事尿意」とでもしてやったら、どんな反応をしただろう。
「百事尿意」を見て、「ほう。」と言った住職を想像したら、笑ってしまった。
「あなた。」と怜子が言った。
怜子とは、僕の妻である。
「あなた、また変な事妄想してたでしょ。今、あなたどっかの世界に飛んでたよ。」
「いや、そんなことないよ。この料理が美味しいから、どんなレシピかなと思って考えてただけだよ。」
答えに窮して、そんな返事をしてみる。
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