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スズ姉がいなくなったあの日、当然僕はそこかしこ行ける限りの全部を探したし、友人も親戚も集落の人も、手当り次第に訊いて回った。
そうしてわかったことはただ一つ。
スズ姉という人は元々いない――否、元々いなかったということになっている、ということだけだった。
スズ姉のところの小父さん、小母さんは以前から、家族ぐるみで付き合いの深い僕のことを実の息子のように思っていると言ってくれていたけれど、それはスズ姉と実の姉弟のように仲睦まじい姿を見てのことだったはずだ。
なのに今や2人は僕にこう言う。
自分たちは子どもに恵まれなかったから、ちぃちゃんがうちの子みたいなものだよと。
スズ姉の部屋だった2階の一室はがらんどうで、物置にすらなっていないのが、彼女が確かにいたのだということを知っている僕にとってみれば、いっそ不自然なくらいだというのに。
小父さん、小母さんと顔を合わせる度、我が子がいたことすら忘れてしまうのと、ある日不意にいなくなってしまうのでは、いったいどちらがより深い悲しみなのか考えて――結局、今日まで結論は出ていない。
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