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第1章 ヘッドハンター
薄暗い部屋の中、学問書やマイナーな科学雑誌がぎっしり詰まった棚が
壁を覆い隠すように並べられている。
部屋の中央には大きなテーブルが置かれ、
ロケットの模型や宇宙服を着た人形を配したジオラマが
テーブルいっぱいに広がっている。
窓越しに年季を帯びた事務机が置かれ、
机を挟んで二人の男がトーンを抑えた声で話し込んでいる。
「真壁教授、高城さんの希望就職先について何か聞いてますか?」
ダークグレーのスーツに地味な紺のネクタイを締めた無難極まりない服装の男が
机を挟んで窓側に立つ男に訪ねた。
「はい、伍井重工への推薦状が欲しいと言われました」
ヨレヨレのジャケットを羽織った、頭髪が全て白髪の中年男が恭しく応える。
「そうですか、民間ですか。分かりました、伍井重工へは話をつけておきますので、推薦状を書いて頂いて構いません。それと、」
言葉の途中で、スーツの男は胸の内ポケットから封書を取り出し、机の上に差し出した。
封書には”経済産業省”の文字とロゴらしきマークが小さく印刷されている。
「高城さんが伍井重工の面接から戻られたら、この封書を渡して頂けますか?」
「分かりました。あと、あのぉ、今年の補助金の件ですが…」
「承知しております。今年も引き続き援助させて頂きます」
言いよどむ中年男の言葉を制すようにスーツの男が応えた。
中年男は軽く頭を下げると同時に机上の封書を手に取りジャケットの懐にしまった。
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