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「河沖くんが気付かせてくれたの、ありがとう」
そう言った夏海の笑顔は、晴翔が一番印象に残っていたあの頃の笑顔と変わらなかった。
「ずっと忘れられなかった、あの優しい『大丈夫?』が」
晴翔自身はその言葉をはっきりと思い出せてはいなかったけれど、夏海が悲しさだけを忘れられずにいたわけではないと知っただけで充分だった。
「いや、こちらこそありがとう」
「え?」
「何もできなかったって思っていたけど、こんな俺でもちょっとは川渡さんの役に立ててたんだって、思えた」
微笑み合う晴翔と夏海のそばには、あの時には感じ取れなかった暖かい夕日のような空気が伝わっていた。
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