頬をつたう

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晴翔と彼女は特別仲が良かったわけではない。 でも、名字の五十音が近かったからか入学式があったその日から席は近くになった。 そしてそれはその後の席替えでも何度となく繰り返され、2年で同じクラスになってからも続いた。 だから、授業の際には話をすることがあった。 けれども普段から自然と話しかけられるほど積極的ではなかった晴翔。 そんな彼が彼女に対して持っていた印象は、笑顔が似合う人。 だから彼女が、夕日で暖色に包まれる校庭を冷静に射抜くような目で、木々のざわめきを打ち消すような声で言ったあの言葉は、何年経とうとも晴翔の心の中から消えなかったのだ。
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