本能よりも速く

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そして後日、丁寧な招待状が送られて来て、ご無沙汰していた後ろめたさもあり、出席の返事を出してしまったのだ。 それに俺自身、どうしても確かめておきたい事があったから…。 とにかくそういった経緯でご招待を受け、自分にとって一張羅のスーツを身に纏い、ここまでやって来たのだけれど、セレブによる、セレブの為の会合を目の当たりにし、早くも怖じ気づいてしまったのであった。 何はともあれご挨拶と祝福の言葉を述べなければと、俺は件の先輩、安藤博也さんとその婚約者である多田愛弓さんの姿を探し始めた。 俺達が所属していたのは、某私大の中にある「天文学愛好会」というサークル。 といっても別に、小難しい専門的な勉強をする訳ではなく、ただ単に星座や惑星なんかを肉眼や望遠鏡でひたすら観測するというだけの、ほのぼのとした会だったんだけど。 なので安藤先輩を筆頭に、メンバーはほぼ穏やかでのんびりほんわかしている人ばかりだった。 「流れ星を見つけたら願い事を3回唱えなくちゃ!」なんて、本気でメルヘンなミッションに挑んだりなんかしちゃったりして。 常時10人前後しか会員がおらず、また、星を愛でるという事はすなわち、深夜、屋外にて活動する必要があり、必然的に宿泊できる施設を利用する流れになるので、同じ釜の飯を食べ、寝起きを共にする機会が多かったから、余計にアットホーム感が強まったのかもしれない。
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