本能よりも速く

4/10
前へ
/10ページ
次へ
とても居心地が良く、卒業する頃にはすっかり天体マニアになっていたけれど、実は入会した動機はかなり不純で。 ズバリ、高校からの同級生で、実は秘かに思いを寄せていた、今宵の主役の一人である多田さんが会員になったのを偶然知ったから。 学食にて友人達に「面白そうだから私は入るよ」と話しているのを盗み聞きし、その日のうちに俺も入会手続きを済ませたのだった。 我ながらストーカーチックだけど、ただただひっそりこっそり片思いをしていただけで、つきまとい等はしていないのでそこは大目に見て欲しい。 『一気に仲良くなれるチャンスだぜ!』と浮かれはしゃいだけれど、多田さんにとっては俺はあくまでもたまたま高校と大学が一緒でサークルも被っただけの、一同級生に過ぎず。 その域を出る気配さえないまま、彼女は早々に、当時会長を務めていた三つ年上の安藤先輩とくっついてしまったのであった。 それなりに落ち込みはしたものの、『ま、俺の人生しょせんこんなもんだよな』とすぐに諦めがついた。 だって、最初から彼女は高嶺の花だと思っていたし。 しかも相手が安藤先輩じゃあ勝ち目などありはしない。 黒縁眼鏡をかけ、今風なアレンジはしていない黒髪短髪だけれど180近い長身と細身なスタイルが手助けしているのか全くダサくはなく、洗練されていて知的な雰囲気漂う美青年であった。 そして何より彼は生まれながらの生粋のお坊っちゃま。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加