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これまた見かけ倒しでアルコールにはめっぽう弱いのに。
「飲まなきゃやってらんないわよ。だけどすぐに気持ち悪くなっちゃってさ。だから夜風にあたってくんの」
「っていうか、ここって勝手に出入りして良いんですか?」
「許可は取ってあるから大丈夫よ。それよりあんた、早く皆の所に行けば?あそこに居るわよ」
言いながら先輩が右手で示した方向を見ると、ステージが設置してある近辺の衝立の蔭に、主役の二人とそれを取り囲むようにして立っている見知った面々の姿が確認できた。
「いや…。とりあえず後で良いです」
一瞬思案し、返答する。
「俺も一緒に行きますよ。ホテルの中庭がどうなってるのか興味があるし」
ご招待いただいているのに挨拶を後回しにするなんて無礼にも程があるけど、先輩を一人にしておくのは何だかとても心配だった。
「…勝手にすれば?」
そのままスタスタと歩き出した彼女に続き、俺も急いで外に出て扉を閉め、後を追いかける。
「うわ~、やっぱ庭も圧巻だなー」
石畳になっている通路を歩きながら思わず感嘆の声をあげた。様々な木々の合間に設置されている外灯によってライトアップされているそこは西洋風の庭園で、敷地中央に噴水があり、そこから左手数メートルの位置に石造りのあずまやが建てられていた。先輩は一直線にそこまで歩を進めると、ベンチに尻餅をつくようにして腰を落とす。
「大丈夫ですか?」
「ノーブルの中に潜入できるなんて、この上なくラッキーなことよね」
傍らに立ち、投げ掛けた俺の問いには答えずに、先輩はまるで独り言のように呟いた。
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