死鬼神先生と猫の従者

第１章

　安倍家は、医院の裏手に自宅を構えている。住人は、高校生の智弥子(ちやこ)とその兄で警察官の智樹(ともき)、看護師の母と医師の父、同じく医師の祖父の５人。
　そして、やはり医師の独身の叔父が離れに暮らしている。

　元々安倍家は陰陽師の家系なのだが、江戸時代に初代院長が医者を始めたのが最初だという。
　母屋の２階の１室に住んでいるのが、志紀　守(しき　まもる)。安倍家の住人たちに気を許している彼の正体は、９尾の狐。普段から人間の姿をしている謎だらけの男である。