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興奮気味に顔を跳ね上げると、嘉瀬くんは意外そうに瞬いた。
「へえ? 俺のこと、知ってんだ」
「そりゃあ、色々と聞きますし……」
"不愛想王子"だの、"絶対零度の天使"だの。
確か、ファンクラブもあったはずだ。つまり、超のつく有名人。
「なんでここに……?」
「なんでって、バイト先だから」
ん、と嘉瀬くんが自身を指さす。
……ホントだ。
よくよく見れば、彼は制服ではなく黒地のギャルソン服を纏っている。
「それで? 先輩は大好きな織部先輩追っかけてたら、見事玉砕ーってトコ?」
「なっ!?」
(なんで知ってるの!?)
顔面蒼白で絶句する私に、
「隣駅のこんなトコまでストーカーしてんだもん。そりゃわかるでしょ」
嘉瀬くんは呆れたように言う。
(……ストーカー)
確かに、言われてみれば違いない。
これでは下手な嘘をついても、かえって見苦しいだけだろう。
観念した私は苦笑を浮かべた。
「……告白する前に、終わっちゃった。でも、これで良かったんだと思う」
「……諦めんの?」
「だって、さっきの人、見たでしょ? すっごく可愛くて、まさにお似合いーって感じだし。……私なんかが告白しても、かえって迷惑になっちゃう」
こんなブスに「好きです」なんて言われたって、迷惑なだけ。
誰よりも自分が一番わかってた筈なのに。
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