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ねじ巻きジートと変なおさむらい
そこはジャングルだった。
引っぱられた手が自由になってまわりを見ると、あたり一面にびっしりと木が生えている。だけど、何だか日本っぽくなくて、熱帯雨林みたいなしめった感じがしたの。
何が何だかわからなくて、自分の手を見たら、もうドアノブにはにぎられてなかった。後ろをふり返ったら、あのドアがあった。こっち側に開いている。
もどらなくちゃ。
急いでドアに向かおうとしたら、ドアが閉まり始めた。
「だめ、待って!」
ドアの向こうには校庭が見えていた。さっきまで私がいた、夜の校庭が。
私はかけ出した。でも、ちょうどドアにかけ寄った時、ドアはぱたんと閉まってしまった。こっち側にもドアノブがあったからおそるおそるにぎって回してみたけど、ガチャガチャ言うだけでドアは開かなかった。
ドアは大きな木にくっついていた。すっごくすっごく太い木で直径はたぶん3メートルくらい。まるでその木がだれかの家で、ドアはその入口なんじゃないかという感じだった。
「どうしよう」
こんなジャングルみたいなところにぽつんとひとりで、心細くなって泣きたくなってきた。
まわりを見ると暗かったけど、それはどの木にもうっそうと枝や葉がしげって空をおおっているからで、天を見上げるとその間には青空が広がってた。
「夜の校庭から昼間の森に来ちゃった」
チーチー、チチチと何かの鳥の声が聞こえた。ほほう、ほう、というふくろうみたいな鳴き声も聞こえる。
どうしたらいいかわからなかったけど、ここから動きたくなかった。だって、ドアがあるんだもん。いたずらに動きまわってドアがどこだったか迷っちゃったらいけないし、ここにいればまた何かのはずみでドアが開くかもしれないでしょ。
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