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 一升瓶の有機純米酢をもらったって、こんなに酸っぱい想いをすることはない。こんな真っ直ぐ、恥ずかしさ以外の何物でもない言い回しを使うほどなのだ。重さはそれ以上にあって、重量がどんな意味へ変成して自分の心情にぶつかってくるのか。育ちの良い、恵まれた家庭環境の小さな男の子が期待するクリスマスプレゼントよりも強い明白な約束として、愛情へ昇華されていない若い新鮮そのものの初めての体験として待ち受けられていたものは、ピザかホームベースでも収まっている白い正方形の化粧箱としてやってきて、貰った瞬間の嬉しさといったら、事を成す為にいく通りも仮想をして、事の初めまで実行を移すのだが、最初の一歩からまったく予期せぬ外れた筆致をするしかできない内気な人間の自分自身に対する不信感を、数十年かけて挑戦して初めて逆上がりに成功するちっぽけな成果を得たことで、不信こそまさしく不信でしかないと取り違えた認識を手に入れた瞬間の喜悦により、全身が周囲の空気を取り込んで爛爛とする程の人生体験をもたらす程だったからこそ、とある依怙地なプロレスラーのフィニッシュホールドよりも定まった形式のものとしてカーネーションに並ぶチョコレートは、若気の突っ走った恋の灼熱により備前焼よりも長い時間で焼成され、偏屈な作家による凝りに凝った意匠により臍を曲げた作品として形成されて、一つの森を飲み込んだ火災にあたっても灰にならずには済んだが、炭化した牛のレバーのような固まりとして黒いハートのプレゼントは、二月二十四日の人人の頑迷の集いの儀式にふさわしい形で自分の眼前に登場した。
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