本編

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傍にいた健介の顔が、制服が、良太の血で染まってゆく。 目の前の光景に健介は瞳孔を開き、戦慄した。 息もままならず、気絶しそうな程の精神状態に犯され、腰を抜かしペタリと地面に座り込む。 その数秒後、意識の無い良太の体が人形のような動きで崩れ落ちた。 紘はただその光景に目を奪われ、硬直している。 「……許さない。邪魔するなら、許さない…」 少女は見開いた冷淡な瞳で良太を見下す。 良太の倒れている辺りの地面が血の海と化してゆく。 少女はちら、と放心状態の健介に視線を移し、早足に詰め寄った。 健介を見下す冷たい瞳。 空を仰ぐ瞳孔の開いた瞳。 全てを目の当たりにする怯えた瞳。 ふ、と健介が小さく息を漏らした。 「………ふ………ふふ……っはは……あーー…う…ふ、ふふっ…あははは…」 健介の奇怪な笑い声が響く。 「…むふ……ふ、ふ、ふふふ。あはは…はぁーう…うふふ…あはっあは、はぁあはぁんふふ」 ただ壊れた玩具の様に笑い続ける健介に、少女は冷たい声で一言問うた。 「あなたも、邪魔をするの?」 返事は無い。 健介は相変わらず笑い声を上げている。 少女は暫く笑う謎の物体を見つめ、飽きたかのように突然、包丁を持つ手を高く振り上げた。 健介は自分の置かれている状況を理解出来ていないのか、それとも疾うに意識を失っているのか、その視線は空に向けられたままだ。 怯えや恐怖は一切ない。 それどころか、感情すら失っているのかもしれないが。 紘は掠れた声を絞り出す。 「………ま……ッ…!」 しかし、遅かった。 少女は揺れる健介の頭部目掛けて一気に腕を振り下ろす。 瞬間、ぐちゃ、という潰れた音が響き渡った。 笑い声が途絶える。 「………け……っすけ…」 絶句。 ただ名前を呼ぶことしか出来ない。 目の前で、人が殺されていく。友人が、二人も。 目の前で。 自分の見ている目の前で。 健介は途切れ途切れに短い呼吸をし、白目を向いて泡を吹き出した。 それを見下ろす少女は、突き刺したままの包丁をそのまま左右にぐりぐりと動かす。 ぐちゃ、ぐちゃ。 中で脳みそが潰れる音が漏れる。 そしてす、と頭部から包丁を抜くと、それと共に中の一部が刃についてきて、薄赤の色をした物体が地面に零れた。
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