0人が本棚に入れています
本棚に追加
健介の頭から飛び出た脳みそが、すぐ足元に落ちた。
びちゃ、と音をたてて。
一気に腹の底からモノが上がってくる。
酷い吐き気に襲われ、紘は口に両手を当てた。
油断すれば直ぐにでも腹のモノが溢れ出てしまう。
涙目になりながらハッと少女に目を向けると、じっと紘を見つめていた。
濃い赤と、薄い赤の付着した包丁。
無気質な表情。
足元に転がる二つの死体。
視界が、世界が回ってゆく。
回って、回って、眩んで──……
---------
次に目にしたのは、真っ白な天井。
虚ろな意識の中重い体を起こす。
辺りは天井と同じ白い壁の部屋。
他に在るのは紘が寝かされていたベッドが一つだけ。
その他には何も存在しない。
ここは…?
全く見覚えのないこの空間。
なぜ自分がここにいるのか、記憶の糸を手繰る。
しかし、脳はそれを拒んでいるのか、ズキリと頭部に鋭い痛みが走った。
と、その時。
部屋に設置された灰色のドアが音を立てて開いた。
その先には、腰の辺りまで伸ばした艶やかな黒髪を揺らす少女の姿が。
見覚えのある顔が、紘を見るなり煌々と色めかせた。
「おはよう。目が覚めたんだね」
耳障りな、甘い声。
一気に気絶する直前の記憶が甦る。
そうだ。
こいつは、この女は、良太と健介を殺した
殺人犯。
紘は咄嗟に固く身構え、威嚇するように少女を睨み上げた。
心臓が激しく脈打つ。
体中の毛穴からぶわっと冷や汗が溢れ、滑っていく。
殺される。
死にたくない。
最初のコメントを投稿しよう!