本編

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健介の頭から飛び出た脳みそが、すぐ足元に落ちた。 びちゃ、と音をたてて。 一気に腹の底からモノが上がってくる。 酷い吐き気に襲われ、紘は口に両手を当てた。 油断すれば直ぐにでも腹のモノが溢れ出てしまう。 涙目になりながらハッと少女に目を向けると、じっと紘を見つめていた。 濃い赤と、薄い赤の付着した包丁。 無気質な表情。 足元に転がる二つの死体。 視界が、世界が回ってゆく。 回って、回って、眩んで──…… --------- 次に目にしたのは、真っ白な天井。 虚ろな意識の中重い体を起こす。 辺りは天井と同じ白い壁の部屋。 他に在るのは紘が寝かされていたベッドが一つだけ。 その他には何も存在しない。 ここは…? 全く見覚えのないこの空間。 なぜ自分がここにいるのか、記憶の糸を手繰る。 しかし、脳はそれを拒んでいるのか、ズキリと頭部に鋭い痛みが走った。 と、その時。 部屋に設置された灰色のドアが音を立てて開いた。 その先には、腰の辺りまで伸ばした艶やかな黒髪を揺らす少女の姿が。 見覚えのある顔が、紘を見るなり煌々と色めかせた。 「おはよう。目が覚めたんだね」 耳障りな、甘い声。 一気に気絶する直前の記憶が甦る。 そうだ。 こいつは、この女は、良太と健介を殺した 殺人犯。 紘は咄嗟に固く身構え、威嚇するように少女を睨み上げた。 心臓が激しく脈打つ。 体中の毛穴からぶわっと冷や汗が溢れ、滑っていく。 殺される。 死にたくない。
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