本編

13/30
前へ
/30ページ
次へ
友達を殺した。 殺される。 異常だ。 殺人犯。 死にたくない。 殺される。 なんで俺がこんな目に。 殺される。 早く逃げなくちゃ。 死にたくない。 ここから。 死にたくない。 でも…怖い いやだ。 死にたくない。 殺される。殺される、殺される! 紘の警戒した態度に、少女は心を痛め、悲しそうに笑む。 「大丈夫、わたしだよ。ここは安全だから」 耳を疑う言葉。 安全、だって…? こんなわけのわからないところが? 人殺しと同じ部屋にいるのに? 何が安全なんだよ…。 イカレてる。 少女に対する恐怖を通り越し、今では感情が憤怒で支配されていく。 腹の底から沸き上がる黒い感情。 紘は唇を噛み締めた。 「…ふざけんなよ…!なんなんだよ、お前。ストーカー女で、人殺しで、今度は監禁か!?……なんなんだよ……なんで……何がしたいんだよ…。なんであいつら…っ!」 次第に声が震え、目に涙が浮かぶ。 良太と健介は死んだ。この女に殺された。 自分が見ている、目の前で。 何も出来なかった。 友人が襲われていく中、ただ恐怖に怯え指をくわえて見ていただけだ。 何も、出来なかった。 無力で情けない自分。 腹立たしさと恐怖と憤りと後悔。 様々な感情が交差し、廻る。 少女はコツ、コツ、と靴音を響かせベッドに歩み寄ると、突然紘に抱き付いた。 包み込む様に、ふわりと。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加