本編

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"男子生徒誘拐事件" こいつが俺を探していて、似た奴を片っ端から連れてったってんなら、犯人はこいつで間違いないだろう。 絶対、こいつに違いない。 躊躇いもなく人を殺せるんだ。あんな冷たい瞳で…。 誘拐なんて、お手の門だろ。 紘はごくり、と唾を飲み乾いた唇を舐めた。 重苦しげに、徐に口を開く。 「……お前…が、誘拐事件の…犯人なのか?」 じ、と少女を見つめる。 くるりと頭部だけをこちらに向け、やんわりと笑む。 「そうだよ?」 あまりに当然、とでも言いたげな言い回しに、紘は唖然とし、続けて問いを続けた。 「…じゃ、じゃあ…そいつらはどこにいる?」 「そいつら?」 「だから…誘拐した、やつらは…!?」 「………。」 「………いないの「殺したよ」 途端、しぃんと辺りが静まり返る。 少女の、あまりに平然な顔。淡々とした声。 "当然でしょ?" そんな言葉が聞こえてきそうな表情。 紘は驚愕し、言葉を失う。 殺した…全員…? 俺と間違えられて、みんな死んだ? こいつに、殺された? こいつが、殺した…? 先程まで失いかけていた恐怖心が、一気に戻ってくる。 そうだ。こいつは人殺し。 殺される。 俺も、殺される…! しかし少女は、相変わらず抑揚のない声で続けた。 「わたしにとっては紘が全てなの。紘以外はどうでもいい。わたしが紘を守るよ。ここにいれば、安全だから。一緒に、いつまでも幸せに暮らそう?」 無邪気な笑顔が、そう告げる。 普通なら、言われて嬉しい言葉のはずが、今では逆に悪寒さえ走る。 気持ち悪い。 こんな誰だか分かんない奴に好かれて、みんな殺されて、閉じ込められて、一緒に暮らそうだ…!? ふざけんな! 誰がこんなイカレ女と…! 今すぐにでも逃げ出したいが、まだ不明な点がいくつもある。 紘は本音をなんとか抑え込み、少女の言葉には触れず質問で返した。 「なんで、そんなこと…」 「必要ないもの。紘以外は全部。紘じゃないなら、いらない」 「…そんな、理由で…!?大体なんで俺なんだよ…!俺はお前なんて知らない、知ってたとしても覚えてない!」
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