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「それでもいいの!……忘れられてたって、知らないって言われたって、わたしは別に構わない。それでも、わたしはあなたが好きだから…っ」
少女は声を荒げ、顔を歪める。
一変した彼女の雰囲気に、紘は一瞬戸惑い言葉に詰まる。
少女からの説明では、物事の全てを把握することが出来ない。
かと言って下手に刺激をすれば自分の身が危険に晒されてしまう。
紘は思うように動けず、そのもどかしさに苛立ちを覚えていた。
少女は直ぐに無気質な瞳に戻ると、そっと紘の隣に腰掛けた。
ぎょっとした紘は慌てて立ち上がりベッドから立ち退く。
少女は再び悲しそうに笑み、語り出す。
「わたしたちは、小学校の同級生だったの。同じ学校で、同じクラスで…。でも、一度も話したことがなくて、ずっと紘のこと見てるだけだった。そんな時、一人の女の子が紘に告白をしたの。事件はそれから始まった」
「………事件?」
「ホントに、何も覚えてないんだね」
いや、違う。覚えてる。思い出した。
小学生の…五年の時だ。
あの時に、俺……。
それは、今から遡ること四年前。
紘がまだ小学五年生で、ある日、差出人不明の手紙に呼び出されたことが事件の引き金であった。
手紙の内容は、"どうしても伝えたいことがあるからみんなには内緒で裏庭に来て欲しい"というもの。
当時、紘には思いを寄せるクラスメートがいた。
中野 有紗という天真爛漫で活発な少女で、その手紙は彼女からのものだと、紘はクラスのとある人物に教わっていた。
もちろん紘は期待に胸を膨らませ、約束の時間、一人で裏庭へ向かう。
しかし、紘の元へ現れたのは有紗ではなく、全く予想もしない他の人物だったのだ。
それは神谷 純子というクラスメート。
伸びきって汚らしい髪。
太くて濃い眉。
笑うと覗く並びの悪い歯。
一重で腫れた様に膨らんだ瞼。
垂れた細い瞳。
お世辞にも、純子は美人とは言えない容貌の持ち主だったのだ。
クラスの中でも別の意味で目立っており、全身から暗い雰囲気を漂わせ、薄気味悪がられるような少女。
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