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無論紘も気持ちが悪いと日々避けていた人物で、待ち望んだ有紗とは程遠く、腹の底から怒りが沸き上がっていった。
純子は頬を赤く染め、はにかみながら紘に歩み寄る。
「…あ、あの…。有村…くん。来てくれて、ありが──」
「お前なんかのために来たんじゃねーんだよ、ブス!!」
紘は純子の言葉を遮り罵倒し、そのまま走り去っていく。
一人取り残された純子は、酷く顔を歪め、暫くの間泣き声を上げ続けた。
その翌日からだ。
純子への壮絶な虐めが始まったのは。
中心となって虐めを指示していたのは、紘。
自身の勝手な期待を裏切られたという思いと、純子の気味の悪さが許せず、紘は軽い復讐という形で虐め決行へと至ったのだった。
紘はクラスの中心人物。
紘がやれと言えば、クラスの連中はそれに従うのだ。
最初は、ほんの小さなことから始まった。
教科書やノートへの落書き。
給食の量を減らす。パンを取り上げる。
上履きや運動靴を隠す。
陰口。孤立化。
それらが日に日に残酷さを増していき、やがて事件は起こった。
"神谷 純子を追い出そう"
虐めの首謀者は、クラスにこう提案した。
もちろん、反対する者などいない。
始めは仕方なく参加していた者たちも、今では自分から進んで、楽しんでやっているのだ。
間もなく、"神谷 純子追放計画"は立ち上がった。
それから数日後。
いよいよ計画実行日が。
それは放課後、開始された。
教室の隅の席で、帰り支度を整える純子に有紗は一人近寄っていく。
しかも、虐めが開始されてからでは想像も出来ない程の然り気無さで純子に話し掛ける。
「ねぇ、純子ちゃん。今日みんなで肝試しに行くんだけど、純子ちゃんも一緒にいこうよ」
純子は思わずえ…?と声を漏らす。
それもその筈。
先程まで全くの無視か、罵倒を貫き通してきた有紗が、突然誘いをかけてきたのだ。
彼女が近寄ってきた時、また嫌なことを言われるんだろうな、と話を聞くのも気が引けていた分、唖然としてしまう。
純子はあまりに自然で、唐突で不可思議な誘いを不審に思い、ぐ、と身構える。
そんな純子の心情を汲み取った有紗は取り繕った笑みを浮かべ、言葉を足す。
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