0人が本棚に入れています
本棚に追加
「急におどろいたよね。あのね、私たち考えたの。やっぱりいじめはよくないって。だから、これからも純子ちゃんと仲良しでいたいから仲直りのあかしに一緒にどうかな、って思ったんだけど…」
「……わ、わたし……いっても、いいの…?」
「うん!もちろんだよ。てゆうか、私たちのこと許してくれる?」
有紗の問いに、純子は暫し考え込むが、直ぐにはにかんで頷いてみせた。
「ありがとう!じゃあ、今日の夜7時に裏山まで来てね」
有紗はそう告げると、紘たちの集団へと帰っていく。
その後、純子は俯き、周りに分からない様頬を綻ばせた。
今まで受けてきた仕打ちは、決して許せない。
謝られて消えるわけではない。
それでも、みんなが考え直してくれたこと。また、クラスの一員としていられること。
何より遊びに誘われたことが、一番嬉しかったのだ。
しかし、その裏側。
子供たちの残酷な発想は、計画通り進んでいたのだった。
そして、日が傾き町が闇色に染まった頃。
紘、有紗を含む六人の計画実行者は、約束の時間より十分先に裏山の麓に集まっていた。
「いよいよだね」
有紗が期待に満ちた表情でポツリと零す。
紘はこくん、と頷くと全員の顔を見回していく。
「いいか?絶対、神谷にはバレないようにするんだぞ?その時がくるまで…」
全員、口元に笑みを浮かべ、首を縦に振る。
それを確認すると、紘は満足げに鼻を鳴らし、黒い山を見上げた。
「アイツ、泣いてこうかいするぜ。来なきゃよかった、ってな」
それから暫くして、純子は麓に辿り着いた。
約束の時間に少し遅れてしまい、既に置いていかれたかと不安を抱いたが、全員が無事に待っていてくれたことに安堵する。
始めに純子の姿に気づいた有紗は、軽く手を振り呼び掛けた。
「純子ちゃーん!」
「ご、ごめんね。遅くなっちゃって…」
「いいよ。みんな気にしてないし。じゃ、はやく肝試し始めよっか」
全員が頷き、紘を先頭に山の中へ入っていく。
最後尾を歩く純子は、歓喜に頬を緩めていた。
みんな、ほんとはやさしい人だったんだ。
有村くん、わたしを誘ってくれてありがとう。
有村くんが中野さんに頼んだんだよね?
わたしを誘ってきてって。
ひどいこと言われたけど、いいの。
最初のコメントを投稿しよう!