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有村くんやさしいもんね。わかってるよ。
大丈夫。
わたしはずっと有村くんが大好きだから。
だから有村……紘も、わたしのこと好きになってくれたらうれしいな。
愛して……ほしいな。
七人は懐中電灯を頼りに、山の中を歩いた。
暗い上、木の根や枯れ葉、石などにより足場が悪いため、子供たちの体力は急激に奪われていく。
息を切らした紘たちは、目的とは異なるが山の中央休憩地点で足を止めることに。
直ぐに純子を除いた六人は輪を作る。
「どうする?ここでやめとく?」
「頂上までいかないと意味ないだろ」
「でも、そうしたらぼくたちまで帰れなくなるよ」
「ねぇ、もうこの辺でいいんじゃない?」
皆が口々に意見をぶつけ合う中、紘はパン、と手を叩き口論を鎮める。
「どうするかは、俺が決める」
堂々とした物言いに、皆は黙って従った。
それから暫く休憩した後、七人は再び頂上を目指し出発する。
肝試し、と言うわりに皆怖がった様子はないな、と純子は不可思議に感じたが、口には出さず後をついていった。
不意に紘が純子を振り返り、皆も足を止める。
「神谷。お前、前にこい」
純子は名を呼ばれ一瞬びくっと震えて、紘を見上げる。
「ど、どうして?」
不安がる純子に、紘は意地悪く笑み、高圧的な態度でこう告げた。
「お前、俺が好きなんだろ?だったら俺の前を歩け。その方がうれしいだろ」
言い切った紘の瞳は、冷淡で、純子にはそれが本心ではないと充分に理解出来ていた。
それでも、紘の傍にいけるなら、と多少物言いに不満は感じたものの、純子は無邪気な笑顔で大きく頷く。
「うんっ。わたし、前にいく」
若干頬を赤らめながら颯爽と有紗たちの間を通り抜け、紘の前へ。
その間、場にいた全員が黒い感情を胸に抱いた。
気持ちわる。
なんで喜んでるんだ?
ふつう、怒るだろ。
どれだけ有村くんのことが好きなの?
まじきもい。死ねばいいのに。
そんなことも知らず、純子は先頭に立つとにこりと紘に笑いかける。
内心気味が悪い、と引いてしまったが必死に笑顔を取り繕い、紘は先を歩くよう促す。
純子を先頭に、七人は登山を続けた。
うれしい。
紘が、わたしに話しかけてくれた。笑いかけてくれた。
うれしい。
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