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紘のすぐ近くにいる。紘が後ろにいる。
うれしい。
振り返ればそこに紘が。振り返れば……
ちら、と紘を振り返った純子は驚愕し、一瞬頭が真っ白になる。
背後には、誰もいなかったのだ。
いや、正しくは皆消えてしまったのだ。
純子を一人残し、後の六人は姿を消していた。
在るのは、深い闇と冷たく吹き抜ける風だけ。
沈黙。
突然に、恐怖が襲い掛かってくる。
一人、闇の中取り残された。
誰も、いない。
自分だけ。一人だけ。
ざあっと風が木々を揺らし、より一層不気味な色を濃くする。
純子は身を小刻みに震わせ、辺りを必死に見回す。
みんなは?どこ?
誰か…誰かいないの…!?
と、その時。懐中電灯の呼吸が荒くなる。
灯りは点滅を何度か繰り返し、やがて息絶えた。
僅かな光が、希望が消えた途端、ぶわっと体中に冷や汗が浮かぶ。
純子は焦りと恐怖で半泣き錯乱状態に陥り、電池の切れた懐中電灯をバンバンと叩く。
しかし、灯りは灯らない。
再び木々がざわめく。
ざあああぁ。がさがさがさ。
そんな雑音の隙間、微かに少女のクスクスという笑い声が聞こえてきた。
誰か、いる。そこにいる!
純子は縋るように声へ向かって走り出す。
「ま、まって……みんな、そこに………っきゃあ!?」
視界は黒。
木の根に足を取られ、落ち葉だまりに突っ込む。
顔も服も泥だらけに。全身に痛みが走るが、それでも構わず直ぐに立ち上がる。
みんなわたしがはぐれたことに気づいてないんだ。早くもどらないと!
再び声を掛けようとした純子を遮り、何処からか紘の声が。
「バッカじゃねーの、お前」
純子は慌てて声のした方向を向く。
すると、今度は背後から有紗の声。
「普通気づくでしょ。だまされてるって」
「え……?」
混乱し、思考が停止する。
しかし純子の戸惑いなどお構いなく闇の中から声が飛び交う。
「気持ちわりぃーんだよ、ブスが」
「いじめから解放された、とでも思った?」
「一人でかわいそうね」
「あんたなんか誰も仲間に入れたりしないわよ」
「さっさと消えろよ」
「笑い顔とかちょーキモイんですけどー」
「きゃははははっ!」
頭の中で、罵倒の言葉たちが巡る。
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