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何度も何度も、再生される。
頭が痛い…やめて……いやっ…
やめてよぉ……!
「いやああああああ!!!」
純子は頭を抱え、地面に突っ伏す。
そういうことだったんだ。
やっぱり、そうだったんだ。
わたしはだまされてる。
みんなに、紘に、だまされたんだ。
わたしへの虐めをやめるなんて嘘。
嘘だったんだ。
じわりと目に涙が浮かぶ。
視界がぼやけ、景色がゆらゆらと揺れていく。
「じゃあな、神谷。俺たちもう帰るから」
紘が小馬鹿にしたような口調でそう告げた途端、数人の足音が。
しかも、聞き間違いでなければそれらは明らかに純子がいる場所から遠ざかっていく。
「…ど、どういうこと…?」
涙目のまま顔を上げ尋ねるが、誰からも返事は来ない。
ただ、笑い声だけが返ってくる。
みんな、わたしをここへ置いていくつもりなんだ…!
こんな暗い中、一人で帰れるわけないよ!
焦燥感に駆られ、純子は慌ただしく立ち上がると、笑い声へ向かって駆け出す。
「………って………よ……ま、……って……まって……いやっ………あ……ああ……まって…紘……紘ぉ…!まって……まってよぉー!」
しゃくりをあげ、必死に訴えるが、その悲嘆な声は、誰にも届かなかった。
その頃紘たちは、計画が無事に成功したことに歓喜の声を上げていた。
見事、純子を一人山に置き去りにする計画は実現されたのだ。
紘たちは満足げに、浮ついた足取りで下山していく。
「やったね、紘くん」
隣を歩く有紗が悪戯な笑みを浮かべる。
紘はああ、と頷き鼻を鳴らす。
「これで神谷も、学校やめて消えるだろ」
翌日。
昨晩、小学生が出回るには遅い時刻に帰宅した紘は、予想通り母親、和泉に酷く叱られた。
他の参加者たちも同様だろう。
そのためか、幾分目覚めが悪い紘は食卓についたものの、不機嫌そうに呆けていた。
あの後の純子のことなど、頭の片隅にも浮かびはしない。
気にもならない、というより、忘れていた。
そんな紘が驚愕し、言葉を失うのは、その少し後のこと。
「あら?チャンネル違うわね」
朝食の支度を済ませ、テーブルに料理の乗った皿を並べ終えた和泉はテレビを見るなり小さくぼやいた。
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