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「? どうした、紘」
声を掛けられ、全員が足を止める。
良太の問いに、暫し逡巡すると、言い辛そうに切り出した。
「あの、さ…。俺も…一緒に帰っていいか?」
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昨日と同じ、帰宅路の路地裏。
気配を感じた、場所。
しかし今日は紘一人ではなく、良太ら五人の姿もある。
結局、昨日の恐怖に怯えている紘は、安全のため集団下校に加わることを決意したのだった。
こんだけ数がいれば、手は出せないだろ。
紘は周りを囲まれていることに、この時間だけは酷く安堵した。
「しっかし…。急にどうしたんだ?昨日まであんな嫌がってたのに」
良太の純粋な問いに、紘はただ曖昧に返事を返す。
「ああ…。まぁ、その…なんだ。気分転換…みたいな」
「はあ?気分転換?」
「ど、どうだっていいだろ」
深く追求されない内に話を切り上げたい紘は、さっと前に向き直ると、少し良太から距離をとった。
良太は暫し黙って紘の後ろ姿を見つめ、心情を理解したのか、口元に笑みを浮かべる。
「もしかして紘くんはぁ、怖いのかなぁー?」
「は、はあ!?」
図星を突かれたは、つい声を裏返らせ良太を振り返る。
五人の視線が紘に集まり、その内の一人、健介が口を開いた。
「怖い、って…何が?」
「な、なんでもねーよっ」
事を荒立てまいと誤魔化すが、再び良太によって紘の心情が明かされる。
「紘はさ、なんだかんだ言って誘拐事件のこと気になってんだって。平気なフリしてたけど、やっぱ怖いんだってさ」
「お、おい良太!」
良太の茶化す様に軽快な口振りとその内容に、健介たちはケラケラと笑い声を上げた。
紘は苛立ちを噛み締める。
コイツらは知らないから、笑えるんだ。実際に体験してたら…。
……。そういえば、昨日ストーカーされてたのに気づいたのって、この辺だよな…。
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