雨蝶

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 つい今しがた、祭りを楽しんだ後、ちょっとした休憩のつもりで神社の階段へ腰掛けた。長い階段の頂上から見えるずらりと並んだ屋台と提灯の列。背後に佇んでいる社殿は静まり返り、真下から響く騒がしさと対照的で、どことなく物の怪の気配がするような非日常がそこにあるような気になる。そんな雰囲気に触発されたのか、一緒に遊びに来ていた友人である幼馴染から、とある話を聞いたのだけど、それが随分不気味な話で私は面食らってしまった。  たまに、変なことを言う子だとは思っていたけど、その話を聞いた時、ぞっとしたものが私の背筋を這った。  それは、その内容にでもあったし、彼女の表情にもよるところだった。彼女は、自分自身でもかなり腑に落ちないようすで、不思議そうに首を傾げるのだ。私だったら、そんな話、緊張やら恐怖やら何やらで頬が強張らないはずがない。  彼女の胸の内では、そんな想いがあったのかも知れないけれど、私には微塵も感じられなかった。それが、何故かすごく私の心に、嫌悪のような、底知れない恐ろしさのようなものを芽生えさせた。  彼女の話に寄れば、それは突然起こったらしい。
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