これはぼくと宮梨さんの話

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宮梨(みやなし)明日香(あすか)。 彼女と出会ったのは、偶然だった。 それは展覧会の会場。 市内の小学校、中学、高校の作品の展覧会で、各学校から参加作品が並ぶというもの。参加校は多分適当で、並んだ作品数は多いものの、市内のすべての学校が参加しているわけではないのだろう、と察する程度。 で、なぜぼくがそんな展覧会の会場にいたかというと。 ぼくの作品が展示されていたから、だ。 美術の時間に描いた、透明水彩の絵が、なぜか教員の目に留まったらしく、出品しといたから、と、事後報告された。一体何が素晴らしいのだか、ぼくにはわからないが、展覧会に出されたのだ。 ぼくに、絵の心得なんてない。 授業で提出しなければいけなかったから、描いただけ。小学校では使わなかった透明水彩とやらの色味は面白かったし、水加減での色の変わり具合、色を重ねたときの透けかたは、確かに楽しかったけど。 そんな作品だから、展示されるのがうれしくて見に行ったわけではない。ただ、こんなことは二度とないだろうし、それなら記念に見に行くか、という、若干物見遊山的な気分で見に行ったのだ。 しかし、というか、思った通り、並んだ作品は素晴らしかった。 写真と見紛うような絵から、手の込んだ置物、なかなか斬新な掛時計、デザインから考えたという手作りのスプーン、版画、発想力豊かなランプ、細かなステンドグラス……。 本当に多種多様な作品が並んでいた。統一感は皆無なのに、その空間が面白くて、あちこち眺めてしまう。 しばらくして、ぼくは、自分の作品を見るという目的を思い出し、中学校のコーナーに足を向けた。 絵ばかりが集められた一角を見つけたとき、ぼくは思わず足を止めた。 花、だった。 バスケットに入った花。あふれんばかりの、花。 明るくてきれいで、うっかり手をのばしそうになる花が、そこにはあった。 目を奪われるような、生きた花だった。 白い画用紙の白さを吹き飛ばし、こっちの空気すら明るく照らしていた。 ぼくはただただ、立ち尽くした。 その花の絵が、すべてだった。
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