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ミドリ
『それで色々と
キャバクラやガールズバーとかの求人みて
面接受けたんですけど
私こんなんなんで全部不採用で・・。』
タニ
『えー見る目無いな〜オレっちだったら
即採用しちゃうけどな〜(笑)』
もちろん本音では無くお世辞である。
面接官は懸命な判断だわさ。
顔立ちは整ってて悪くないが
明るい性格では無いし
体付きも華奢で
あどけない少女の様な感じで色気が無い。
ミドリ
『・・お、お世辞でも嬉しいです!
お客さんすごく優しいんですね』
少しばかりミドリの
緊張が解れたかの様に見えた。
タニ『おっ!タニて呼んで良いよ(笑)』
ミドリ『はい!タニさん!』
タニ『あはは。て、事はそれで
この店が採用してくれたって訳?』
ミドリ
『はい!本当は面接してくれた
ボーイさんに断られそうになったんですけど
店長さんが口添えしてくて...。』
殿山か....。
意図は分からんが少し意外だな。
タニ『へぇ〜なんて?』
ミドリ
『本当は不採用伝えられて水商売は
諦めようと肩を落として
その場を後にして帰ろうとしてた所
「働くなら続けてく覚悟はあるのか?」て
店長さんから尋ねられたんです』
ふむふむと谷屋は相槌を打つ。
ミドリ
『私は本当は男性経験も無いし
セクキャバで働くなんて怖かったし
少しホッとしてたんですけど
店長の真っ直ぐな目で言われたら
気付いたら即答で「あります!」て
答えてこの店で働く事になったんです』
殿山にもまだ
人の心情を汲むなんて心があったのか…。
タニ『店長さん良い人なんだね!』
ミドリ
『はい!この源氏名も
店長さんが考えてくれたんです!』
まぁー。随分と古風で
地味な名前付けたもんだな。
でも、彼女には似合ってるかもな…。
本人も気に入ってそうだわさ。
ミドリ
『・・店長さんは誤解されやすいけど
時々私を励ましてくれたり
本当はとても優しい人なんです!』
まぁそれも業務の一環と
言ってしまったらそれまでだけど…。
タニ
『そっか。じゃあ店長さんの為にも
頑張らなきゃだね!』
ミドリ『・・はい。・・けど。』
そうだよな殿山はもう此処には居ない。
タニ
『ごめん!そういえば
店長さん違うお店に移っちゃたんだよね』
オレっちは少し心を痛めながら
わざとらしくそう言って
ミドリから何か引き出せないか様子を伺った。
ミドリ
『・・はい。店長さんもなんですけど、
唯一私に優しくしてくれてた
先輩も突然居なくなっちゃて・・。』
おっ!まさか!!寧々では!?
いや、待てよ。嬢が突然飛ぶなんて
事はこの世界では日常茶飯事で珍しい事では
無いしまだ特定出来た訳じゃない。
そう自分に言い聞かせて逸る気持ちを抑え
オレっちは冷静を装い続ける。
いや。ここは単刀直入に尋ねよう!
タニ『え?もしかしてだけど
その先輩て寧々ちゃん!?』
ミドリ
『え!?そうです!タニさんもしかして
寧々さんのお客様なんですか?』
ビンゴ!!
タニ
『うん…前回一度場内指名して
今日も指名で来たんだけどね。
ミドリちゃん寧々ちゃんとは仲良かったんだ』
ミドリ
『・・仲良いというか
初任給の時に初めて「ご馳走するから」と
声かけてもらい呑みに誘ってもらって
悩みを聞いてくれたりして
あの時は本当に嬉しかったなー。』
少し物悲しげだがミドリが
初めて俯きながら少し微笑んだ。
照明の辺り方も相まって
何処と無く神秘的なその姿に
オレっちは思わず見惚れてしまった。
すると囁く様にミドリが呟く。
ミドリ
『それから週に一度呑みに連れてってくれて
・・本当にその為に頑張れた。
またコノハちゃんと3人で呑み行きたいな...。』
それを聞いて少し酒が入って
ぼんやりしてた頭が一気に冴え
気付いたらオレっちはミドリの両肩に手をかけ
鼻息荒く問いただそうとしていた。
ミドリが驚いた様子で
少し警戒し身構え強張った表情になる。
タニ『ご…ごめん!ミドリちゃん!
今言った子の名前もう一度言って!』
するとミドリは首を傾げながら口を開く
ー コノハちゃん? ー
その瞬間照明が落ちミラーボールが
回り始め再びショータイムが訪れた。
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