~プロローグ~

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実はこの発言も後々間違いではなくなるのだが 現時点ではたわいも無いジョークだ。 その子供染みた容姿もあって初対面で 本気にする客はいない 大抵の場合すぐ冗談だと分かって 笑いが起きるのである。 『にぃちゃんおもろいなぁ~!お店行くから安くしてやー!』 『勿論です!今すぐ マンツー※ で待ちなしでご案内出来るお店になりますとCLUBハーレークイーンというお店になりますが皆様ご指名等は御座いますか?』 ※客1人に対してキャスト(ホステス) 1人ずつ席に付いて接客する事。 年末年始など忙しい時、ホステスが少ない時等は少し安くしてマイナス付けと言って 例えば5人団体に対してキャスト3人又わ8人団体に対しキャスト4人等で接客対応する事がある。 『指名もなにもウチら吉祥寺バージンなんや! だから、いい思い出作りになるように頼むで!にぃちゃん!』 青年はニコリと微笑ながら 『左様で御座いましたか。吉祥寺は始めてなのですね!失礼しました。お任せ下さい!』 関西人?いや、たぶん似非だろうなと 思いながらも青年は頭の中で いくつかプランと数字を叩き出す ボスの態度と身なりをみる限り そこまで値引きせずとも 交渉は成立するだろう。 しかし、あまり時間掛けての値切りは危険だ。 こういう既に酒の入ってる団体客はノリと勢が大事だ。 グダるの嫌がって集団の1人が逸れてこっそりと他の店の客引きに交渉し始める可能性がある。 それに通り他店の客引き達が 青年の背後で吐息が今にも聞こえそうな距離で 流れる※ のを待ち構えている。 ※交渉決裂の事 因みに都内近郊のルールでは 交渉中は他の客引きは交渉が流れるまでは その客には声を掛けれないというのが 暗黙のルールとしてポピュラーである。 青年は団体客の話に笑顔で相槌を打ちながら 更に頭の回転を上げ 今日1日の客入り状況や 今現在店内で席に付いて無いキャストの 人数全てを加味して提示額を叩きだす。 『では、当店の通常システムですとワンタイム6000円 tax※ 20%で7200円なのですが、団体割り5000円tax込みで如何でしょうか?』 ※一般的には消費税だが キャバクラ等の飲食店ではこのように高いパーセンテージに設定されている。 チャージ+サービス料 要するに店の従業員へのチップみたいなものである。
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