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『うーん…にぃちゃんもう少し心意気と言うか
漢気みたいなもん見せてもらいたいのぉー』
関西人風の男は少し焦らす感じで
ニヤけながら青年にそう言うと
集団の1人が後方から大声でワザとらしく
『社長!俺もう喉カラカラっす!』と言う。
どうやらこの関西風の男は社長らしい。
青年はその部下の言葉を聞くなり
間髪入れず先程までとは
打って変わり少し砕けた口調でこう言う。
『わかりました!みなさんに吉祥寺好きになってもらいたいんで、俺の気持ちで乾杯ビール一杯と言わず2杯ずつ付けちゃいますよ!』
『よっしゃ!それで決まりや!にぃちゃん店まで案内してやー!』
社長は上機嫌に笑いながら腕を青年の肩に回し歩き出すその後を部下達が続き店の方へ案内する
青年は直様インカム(無線機)のマイクを
右手で口元に運び雑音やノイズが入らないようマイクの前に左手を添えて言葉を発する
『店内 ビラ※ からフリー6名様5込み乾杯生2杯ずつサービスでご案内しまーす!』
※ビラ配りをする通りの略称 実際には客引きばかりでビラを配ってる人は殆ど見かけない
すると青年のイヤホンを通して
耳元に歓喜の声が響く『さっすがそうちゃん!助かるわ~!この調子でバンバン頼むよー!』
その声の主は【CLUBハーレクイン】
の店長でもあり青年の雇い主でもある
桝谷 太一(ますや たいち)だ。
青年は店前に付くとフロント係に
『団体様は今日が吉祥寺呑み始めてらしいので
頼みやっす!』と笑顔で伝え引き渡す
団体客の社長が振り返って
青年の手を掴み堅い握手をして
『にぃちゃんホンマにありがとなぁ!』と感謝の意を伝える。
すると青年は屈託の無い笑顔でこう返した
ー吉祥寺へようこそ!ー
青年の名は 葵 颯太(あおい そうた)26歳
彼はこんなやり取りを毎晩の様に繰り返していて、此れが彼の仕事だ。物語は彼を中心に様々な展開へと発展していく。
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