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彼女の好みで構成されていた僕は、少しずつ変わっていく。僕は自分の好みに合わせたり、他の人を利用しやすいように体裁を整えたりしていく。
前髪を上げる、筋トレを始める、日経新聞を読む、近所の子供と遊んでやる、エトセトラ、エトセトラ。
僕の評判は会社でも他でも上がっていく。かっこよくなった、人当たりがよくなった、話しやすくなった。
前の僕がいなくなることは、快感でもあるし、寂しくもある。
今まで下ろしていた前髪を上げた僕は鏡の前で僕に言う。
「人生楽しめよ。孤独はオレに力をくれる。前にかはわからないけど、ここではないどこかに進むための力。」
前髪を上げた僕がいう言葉には自信がみなぎっていて、例えそれがありきたりな内容であったとしても、それらしく聞こえてしまう。
孤独が作る時間と力は僕に新しい経験をさせる。それは僕に新しい感情を授ける。
昔あったあの愛も、温かさも、僕にはもういらないよ。
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