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フィッシャーにはチェス以外の何も存在しなかった。
彼はチェス界を25歳の若さで引退し、その後には彼には何も残らなかった。
引退した後の彼は、ただの反ユダヤ思想に囚われた偏屈なオヤジであった。いや、引退する前から彼は反ユダヤ思想に囚われた偏屈な嫌味ヤロウであったが、彼のチェスの素晴らしさが巧妙にそれを隠していたのだ。
ある技術の崇高さと、人間性に相関はない。フィッシャーはその言葉を体現していた。チェスを学び、敵を作り、チェス以外の行いをし、敵を作った。思想でも、人間性でも、彼には味方を作る為の手段なんてなかったのだ。
だからこそ彼はチェスで強くなれたのだ。外界に彼の存在を認めさせる手段がチェスしかない。心の平穏を得る手段がチェスしかない。彼はチェス以外に頼る手段がなかったのだ。
だから、僕も彼のように強くなりたければ他の全てを捨てねばならない。
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