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やった。やってしまった。とうとう……。  エリナは暗闇の中、邪魔な修道服とベールを脱ぎ捨てて、素早く村娘らしい質素な鳴りに着替えた。この晩、空は暑い雲に覆われて月明かり一筋さえ差し込まない暗闇だった。  歳は十五ほどになろうかというエリナはその暗闇の中を息も切らさず駆け抜けてゆく。何も知らない村人が見たら、その素早い身のこなしを見て人とは思わず、狐狸魔物の類と勘違いしたことだろう。  駆けてゆくエリナの足元につるバラが生い茂っている。この地方では毒バナとして知られているイリヤの魔のバラだ。それが、エリナの細く締まった足首に何の拍子か引っかかった。  全力疾走中だったから、たまらない。  エリナは地面に叩きつけられ、とっさに受け身を取ることもままならず、身体を縮ませてゴロゴロと転がった。  足首を電流が走り、エリナの食いしばった歯の間からおし殺せなかったうめき声が漏れた。スカートも破けてしまい、まだ青い幼さが残る太ももが露わになってしまっている。     
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