縁の管理人 第1章

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縁の管理人 第1章

『清ノ原(さやのはら)町に来たのなら、紬喜(つむぎ)神社へ行き、土地神様にご挨拶をしなさい』  これは、この清ノ原町で古くからある言い伝えだ。この町の面積の大半を占める紬喜山の奥に、紬喜神社は存在する。縁結びの神社の総本社として構えるその神社には、〝縁〟を司る土地神がおり、町全体を見守っていると言われている。  全国各地に神霊を分けた分社が存在するが、総本社である紬喜神社は特にその力が強く、土地神と縁を結ぶことが出来れば、町に住まう限り健やかに過ごすことが出来るとされている。  そして今日もまた、若い夫婦が新たな命と清ノ原町との間に、縁を結ぼうと神社を訪れていた。 「――糸結びの儀」  神社の神子が若い女性の膨らんだお腹にそっと触れると、神子の手の内が淡く光った。暫くそうしていると、緊張した面持ちの夫婦が見守る中、神子はゆっくりと手を離す。 「これでお腹の子と土地神様は、縁の糸で結ばれました。きっと無事、元気な子が生まれますよ」 「ありがとうございます、結(むすび)様。これで安心して出産日を迎えられます」     
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