縁の管理人 第1章

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 清のような精霊がこの神社にいるのと同様に、山や森にはその木々に宿る木霊と呼ばれる精霊が存在する。この紬喜山に住む精霊たちをまとめているのが清なのだが、異常事態が起これば彼らはすぐに清にその情報を伝えてくれる。だが、早々そういった事態は起きないし、実際、私がこの町に戻ってきてからトラブルに見舞われたことはない。そのため、清の言う巡回の必要性というものを、私は感じなかった。しかし、清はやはり不満そうに首を振る。 「それは確かにそうだけど、この紬喜山で起きる事象に関しての責任は、紬喜神社が取る。つまり、後継者である結衣には、この山を管理する義務があるってことだ。何も起きなくても、木霊たちに挨拶するくらいはしておくべきじゃないか?」 「……確かに、そうかも」 「だろ? そうと決まれば、紬喜山パトロールに、しゅっぱーつ!」 「あっ! もう、待ってよ、清!」  清の言い分について少し納得しただけだというのに、清は言うべきことは言った、というように先を進んでしまう。こうなっては私の意見など聞く耳を持たない。早々に説得を諦めると、清の後を追った。 『あれ、結衣だ』 『おはよう、結衣! 朝から精が出るね』 「おはよう。やっぱりまだ寒いね」  山道を走り出すと、辺りから声が聞こえてくる。木々に宿る精霊たちだ。その姿は見せず、口々に声をかけてくる。 『私たちも寒いのよ~。早く春にならないかしら』 「そうだね。こう冷えると、朝起きるのも億劫で仕方ないよ」 「今日も遥に起こされてたもんね」 「清、そういうことは言わなくていい」 『ククッ、どうせ今も遥に言われて嫌々走ってるんだろう? 結衣は遥に弱いからなあ』     
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