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「……ほら、清が余計なこと言うから」
「そう思うなら自分で起きたらいいでしょうが」
「……」
正論だ。これ以上何か言っても、自分の首を絞めるだけだろう。言い返すことはやめて、走ることに集中することにする。
「はぁ……そろそろ折り返そうかな」
どれくらいの時間を走っていただろう。神社のある山の中腹から、気付けば見晴らしの良い開けたスペースへ辿り着いた私は、休憩を兼ねてその場にあった適当な岩に腰を落とした。
「……なーんにもないなぁ」
山からの景色をぼんやりと眺める。眼下には、転々と広がる田んぼ、町役場、住宅街、商店街。目玉となるような特徴は一切ない、至って平凡な町だ。
「何もないって失礼ね。紬喜神社があるでしょうが」
「強いてあげれば、ね。でも、あってないようなものじゃない」
町の特徴としてあげられるとすれば、全国の縁結び神社の総本社である紬喜神社くらいであったが、それも家元が倒れてからというもの、このザマだ。
(でもまぁ、おばあちゃんがいたときから既に廃れつつあったしね。 『早く後継者を!』……なんて焦る必要なんてないんじゃないのかな )
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