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神社の現状に対する本音を口にしたところ、清はツンとすましたような顔をしてそっぽを向いてしまった。もしや怒らせてしまっただろうか、と覗き込もうとすると、不意に清はピクッと何かに反応した。
「……雪」
「え?」
清の呟きに反射的に空を見上げると、上空には分厚い雲が鎮座していた。
「うそ、あんなに天気よかったのに」
「早く帰った方がよさそうだね。先行くよ」
「あ、待って。清!」
またも先を行く清を急いで追いかける。走り出すと、それを待っていたかのようにチラチラと雪が降り始めた。出来る限り速いペースで駆け降りるが、雪は待ってくれない。ものの数分であっという間に雪が積もり始めてしまった。
(清がいてくれてよかった)
真っ白な光景に浮かぶ小さな精霊の姿は、はっきりと私の目に映る。視界が白く染まり始めても、それでも道を見失わないで済むのは清が先導してくれるおかげだ。
「見えてきた……!」
やっとの思いで神社が見える場所まで辿り着くと、安堵で溜息を吐いた。ここからなら多少ペースを落としても無事家に帰ることが出来るだろう。
(洗濯物、大丈夫かなぁ。後で遥に怒られそう)
離れの庭に干した洗濯物は、この雪できっとずぶ濡れになっていることだろう。故意ではなかったとはいえ、後々待っているであろう叱責を思うと、先程とは別の意味の溜息が漏れた。
『結衣!』
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