縁の管理人 第1章

13/65
前へ
/186ページ
次へ
 神社の現状に対する本音を口にしたところ、清はツンとすましたような顔をしてそっぽを向いてしまった。もしや怒らせてしまっただろうか、と覗き込もうとすると、不意に清はピクッと何かに反応した。 「……雪」 「え?」  清の呟きに反射的に空を見上げると、上空には分厚い雲が鎮座していた。 「うそ、あんなに天気よかったのに」 「早く帰った方がよさそうだね。先行くよ」 「あ、待って。清!」  またも先を行く清を急いで追いかける。走り出すと、それを待っていたかのようにチラチラと雪が降り始めた。出来る限り速いペースで駆け降りるが、雪は待ってくれない。ものの数分であっという間に雪が積もり始めてしまった。 (清がいてくれてよかった)  真っ白な光景に浮かぶ小さな精霊の姿は、はっきりと私の目に映る。視界が白く染まり始めても、それでも道を見失わないで済むのは清が先導してくれるおかげだ。 「見えてきた……!」  やっとの思いで神社が見える場所まで辿り着くと、安堵で溜息を吐いた。ここからなら多少ペースを落としても無事家に帰ることが出来るだろう。 (洗濯物、大丈夫かなぁ。後で遥に怒られそう)  離れの庭に干した洗濯物は、この雪できっとずぶ濡れになっていることだろう。故意ではなかったとはいえ、後々待っているであろう叱責を思うと、先程とは別の意味の溜息が漏れた。 『結衣!』     
/186ページ

最初のコメントを投稿しよう!

59人が本棚に入れています
本棚に追加