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突然自分を呼ぶ声がして、驚いて立ち止まった。姿は見えないが、声は木々の間から聞こえてきたように思う。きっと木霊だろう。
『こっちに来て! 男の子が倒れてるの!』
「え!? この雪山に!?」
『いいから早く! このままじゃ危ないんだ!』
「清!」
「うん。確かに気配がする。……弱ってるみたいだね。行こう」
気配を察知した清が再び先導してくれる。その後を追っていくと、次第に白い視界の中に明らかに自然のものではない何かが視界に入ってきた。
「本当にいた……!」
その少年は、木の太い幹にぐったりともたれかかって眠っていた。年は私と同じくらいだろうか。その瞳は苦しげに閉じられている上に、息も荒れている。素人の目で見ても、危険な状態であるとわかった。
「よい、っしょ、っとと……!」
肩を貸して担ぎ上げようとするけれど、完全にぐったりと脱力した少年の体は想定以上に重かった。少年より体の小さい女の自分では、立ち上がらせることすら出来そうにない。
「手伝うよ」
ポンッと音がしたと思えば、清の体が私と同じくらいの大きさにまで変化した。精霊である彼女は体の大きさを自由に変えられるらしい。
彼女と協力して少年の体を持ち上げることに成功すると、ひとまず私たちはそのまま彼を神社まで運ぶことにした。
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