縁の管理人 第3章

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 ただでさえ私の家は、家元であるおばあちゃんが病を患ったことで信頼を失いつつある状態だ。跡継ぎ候補の私が失敗を重ねれば、おばあちゃんが帰って来た時には家がなくなってしまっている可能性だってある。それだけは避けなくてはならない。 (それに、私たちが失業するってことは、困っている人たちの頼り先が無くなっちゃうってことにもなるんだよね)  依頼人の願いを叶えることが私の仕事だ。同業者の少ない職業では、別の頼りを見つけることも困難だろう。その人々のためにも、安易なことは出来ない。 「……と、色々言って来たけど」  真面目な顔をしていた佳苗は、後ろ手で頭を掻きながらおどけた表情をして見せた。 「こればっかりは経験しかないんじゃないかなぁ。怖がってちゃ依頼を受けること自体出来なくなりそうだし。ある程度の危険が予想されても、受けなきゃ行けない場面もあるかもしれないし。その時のために経験を積んでおかないとね」 「確かに。失敗から学ぶことだってあるし、この一回きりで諦めんなよ」 「うん、そうだね。今から怖がってちゃ何も出来ないし、頑張るよ」 「よし、その意気だ!」
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