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佳苗と連の明るい笑顔に、私もつられて頬を緩めた。彼らの笑みを見ていると、緊張がほどけて胸がほっと落ち着くのを感じる。
「なぁ、それ食わねえんだったら俺もらっていいか?」
「え? あっ」
連に指を差されて気が付く。余程集中して話を聞いていたのか、手元を見ればプリンがまだ半分以上残っていた。
「やだー、植坂ってば間接キス狙い? もう、やっぱり私お邪魔だったかなー?」
「えっ、ええっ!?」
「はぁ!?」
直前まであれだけ真面目な話をしていたというのに、もう佳苗はおちゃらけた顔をして騒ぎ始める。
「そういうわけじゃねぇよ。つーかしつこい! お前が美味そうに食うから気になっただけだ!」
「もう、照れちゃってー。正直に言いなよぅ。本当に食べたいのはプリンじゃなくてゆ……」
「お前いい加減黙れ」
「きゃー、植坂こわーい」
(……うん)
何を言ってもきっと彼女はからかってくるに違いない。もう何も言わないでおこう。連には申し訳ないが、プリンは今度自分で買って食べてもらおう。
一息ついたところで、再びプリンにスプーンを付ける。開封から時間は経ったけれど、生地は未だ柔らかく艶々していた。
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