縁の管理人 第3章

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「そうそう。話を戻すけど、ここまではうちの母様の受け売りなんだ。普通は依頼を受けるようになる前に、このあたりも教えられると思うけど……結衣はお師匠がおばあ様なんだっけ? 闘病中の」 「うん、そうだよ。おばあちゃんの側近だった遥が、今の私の教育係」 「お、遥さん! 遥さん元気?」 「え、あ、うん。まぁ、普通かな」  遥の名前を出した途端、目に見えて連のテンションが上がった。そういえば連は遥を好意的に見てるところがあったっけ。……遥が男だとは知らずに。 「垣石、知ってたか? 遥さんは超美人で綺麗で優しくて聞き上手で、さらに家事も得意らしくてな、それに」 「植坂、うるさい」 「お前、あれだけ俺のことからかってくるくせに、実は俺のこと嫌いだろ」  超美人と綺麗は同義では、とは黙っておく。佳苗は連が抗議するのも無視して、話を続けた。 「遥さんね。遥さんは神子ではないの?」 「うん、あくまで側仕えとしてお世話係をしていただけみたい。でも知識はあるし、儀式のときも傍に控えてたみたいだから、うちの家のことについてはかなり詳しいよ」 「ふーん、そっか」  佳苗は何事かを考えるように口元に手を当てた。彼女に無視された連も、真剣な空気を読んでか、今は静かに見守っている。 「ねぇ、結衣。これは提案なんだけど」 「なに?」 「よかったら今日、うちに来ない?」 「……へ?」  話の脈絡が読めず、連も私もぽかんと口を開いたのだった。
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