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「お預かりいたします」
「へ? いや、停めるとこ教えてもらったら停めにいきますけど……」
「いいのいいの。預けちゃって。駐車場、正門から少し離れてるから、お客さんにそこまで持っていってもらうのは大変だからさ」
「は、はぁ……」
彼女たちが言っているのは、連の自転車と私の原付のことである。見れば、佳苗も自転車を当然のように女性に預けていた。彼女に倣い、私たちも愛車と鍵を女性たちに預けることにする。
「それじゃあ、支度できたら呼ぶから、客間で待ってて」
「あ、うん。わかった」
そういうと、佳苗は私たちを置いてどこかへ消えていった。残された私たちは、使用人の女性に案内され、客間へと通される。
「なぁ、結衣。支度ってなんだろうな?」
「自分の家だし、私服に着替えるだけじゃない? ほら、家の中で制服のままでいるのってなんだか落ち着かないし」
「ま、それもそうか」
と、呑気にそんな話をしていた私たちだったが、この予想は大きく外れることになる。案内された客間では、先回りしていたらしい使用人の女性が待っていた。
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